✳️【オプジーボはドセタキセルより2倍長く生きられる】
図表1-5は、「非小細胞肺がん」という肺がんの一種の患者さんに対して、オプジーボという薬がとても効くことが証明されたときのデータです(NEJM.2015)。
オプジーボはがん治療の歴史を変えたと言われた薬で、開発者の本庶佑先生は2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞されました。
この臨床試験では、同じ種類のがんに対してそれまで最も広く使われていたドセタキセルという抗がん剤と効果を比べています。縦軸は生存している患者さんの割合、横軸は治療開始からの期間を表しています。
オプジーボで治療を受けた患者さんのグループ(実線)とドセタキセルで治療を受けた患者さんのグループ(点線)の治療結果を比べてください。
オプジーボのグループである実線はドセタキセルのグループである点線と比べて全体的に上に移動していることがわかると思います。
つまり、治療開始後のどの時点でも、オプジーボを使っていた患者さんのほうが生存している確率が高いことを意味しています。
1年経過した時点でオプジーボのグループは42%近く生存していますが、ドセタキセルのグループは24%のみです。この薬を使うことで、より長く生存できる確率が約2倍高くなっています。 津川友介/勝俣範之/大須賀覚〈最高のがん治療〉より
✔️【真相〈もう1つのデータ〉】
著者たちは「私たちは都合のいいデータだけを出して、都合のいいことだけを言っているわけではない!」ということをアピールするためか、実はこのあとにオプジーボで治療を受けた患者の60%が1年後に亡くなっていることを隠さず書いています。
そして「が、その数例だけを見て判断すると、オプジーボによる恩恵を受けられなくなる」と結論付けています。
これだけを見ると著者たちのことをフェアに感じるかもしれませんが、私にはこんな子供だましは通用しません。
まず著者たちはNEJM.2015のオプジーボのグラフを紹介しているのですが、実は2017年のNEJMにもオプジーボと抗がん剤の比較試験のグラフが載ったことがあるのです。ちなみに患者は同じ肺がん患者です。
それを見てみるとオプジーボの線と抗がん剤の線がぴったり重なっており、さらに20ヶ月あたりからオプジーボの線が急降下しているのです。
これは長期投与による副作用死を示唆しています。
つまり〈最高のがん治療〉の著者たちは、やっぱり「都合のいいデータ」だけを出していたというわけなのです。
しかし、話はこれで終わりではないのです。
【NEJMに掲載されたもともとのグラフ】
この記事に載せて紹介できないのが残念なのですが、著者たちは〈最高のがん治療〉の41ページに、前述のオプジーボとドセタキセルの比較試験のグラフを紹介しています。
しかし、NEJMに載ったグラフをそのまま掲載せず、なぜか著者たちで新しく作成したグラフを掲載しているのです。
そのグラフのオプジーボの線が実線。[━━━━]このような感じのものです。
一方、ドセタキセルの線が点線。[・・・・・・]このような感じのものになっています。
では、実際にNEJMに掲載されたグラフを見てみましょう。
オプジーボの線には▲の印が、ドセタキセルの線には●の印がついていることがわかると思います。
これはなにかといいますと、各印の時点で被験者は生きていたのだが、それ以後の生死の追跡調査は打ち切ったという意味なのです。
そのためすで死亡していても、統計上は「生きていた」と扱われるというわけなのです。
このトリックを使えば生存期間を伸ばすことができ、グラフを良好に見せることができるというわけなのです。
〈最高のがん治療〉の著者たちはこのトリックの存在を隠すために、わざわざグラフを新しく作成して掲載したのだと思われます。
【まとめ】
●オプジーボに画期的な延命効果などない。
●〈最高のがん治療〉の著者たちは果てしのない卑怯者である。
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